私の地元は田舎なのだがそんな私の地元には大きな花火大会がある。
もちろん、全国の有名な花火大会と比較すれば小規模な花火大会なのだがこの川崎村は人口5000人にも満たない非常に小さな村である。
にもかかわらず広い道路に立派な道の駅、そして中核都市一関市で最も大規模な花火大会と何かと不釣り合いな村なのだ。
本来私はこのようなイベントは参加しない。花火は非常に好きなのだが人混みがだめなのだ。
小さい村であるのに規模は非常に大きいためこの日だけは小さな村が大渋滞だ。
参加する場合は場所取りに駐車場の確保とほぼ一日がかりになる。花火を見るためだけにこれだけの労力は割に合わないというのが私の考えだ。
今年も行く気はまったくなかったのだが、前々日にカメラ好きの友人と飲んだ際、「撮りに行くがお前も来ないか」との誘いを受けたことでせっかくなのでと参加することにした。
私は花火の撮影をしたことはない。
元々がインドア派であるということもあるし、花火の撮影は難しいというのはなんとなく聞いていたからだ。
腕に自信があるならいざ知らず、ろくにカメラも使いこなせない男がいきなり花火の撮影とはおこがましい。
しかしそのカメラ好きの友人は同い年ながらカメラ歴10年のベテランなので、せっかくなので色々教えてもらおうとも思い、参加することにした。
花火撮影の難しさは暗い中、明るいものを撮影するというアンバランスさにある。
本来暗い場所で撮影する時は明るさが足りないのでISO感度を上げたりF値を緩めたり、シャッタースピードを遅くするなどといった方法で光を取り込む工夫が必要になる。
しかし、場所は暗いが撮影対象である花火は非常に明るいのでISO感度を上げすぎたり絞りが緩かったりシャッタースピードが長すぎたりすると真っ白な写真になってしまったりする。
非常に光量の調節が難しいのだ。
また、花火は打ち上げから花開き、散るまでが美しい。本来は一瞬の一コマしか収められないカメラだが「バルブ撮影」という機能?技法?を使うことで花火の打ち上げから散り際まで一枚の写真に収めることが出来る。
今回の大きな目標はこのバルブ撮影をマスターすることでもある。
今回の川崎花火大会では2時間で1万発の花火が打ち上げられる。沢山シャッターを切れば数枚は良い写真が取れるだろうといういつもの「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」作戦で挑もうと思う。
まずはバルブ撮影ではない普段のやり方で撮影を試みる。



ふむ。撮影してすぐ確認した時はやはり普通の撮影法ではだめかと思ったが帰ってきてパソコンのモニターで確認すると意外とよく撮れている。
広告などに掲載されている打ち上げから散り際までの光の流れを捉えた美しい写真とは比べ物にならないが、素人が思い出として撮っておくには十分な写真ではなかろうか。
これに関しては一切の技術を使っていないのでただただカメラを褒めるしかない。
昔は素人には花火はうまく撮れないと言われていたが、きっと今のカメラは花火撮影も想定して作られているのだろう。いい時代になったものだ。
さて、では次はバルブ撮影を行い、ワンランク上の写真を撮ることを目指す。
最初のバルブ撮影

10秒ほどシャッターを押していただろうか。せっかく購入したリモートシャッターを使わず直接カメラのシャッターを押して撮影した一枚。
リモートシャッターを使わずに撮影するとこうなりますというまさに教科書どおりの結果となった。
光を取り込んでいる間、カメラが動いてしまい、ブレブレの写真となった。

こちらはしっかりとリモートシャッターを使って撮影したのでブレは発生していない。
だがシャッターを切るまでの時間が長すぎたこととISO感度が高すぎたことで明るすぎる。
少なくとも美しい写真とは到底言えない。

今度はISO感度を100まで思い切って落とし、絞りもF22程度まで絞って長めに撮影した。30秒くらいはシャッターを開けていただろうか。
一つのプログラムで打ち上げられた数々の花火を収められたがご覧の通りブレブレだ。
シャッターを切るまでの時間が長ければ長いほどこの問題は起こりやすくなる。

今度はプログラムではなく、一発の花火に標準を合わせて撮影した。
一発のみなのでシャッターを切るまでは3秒程度。打ち上げられる軌道と花開くまでが収められている。
比較的うまくいったバルブ撮影だ。
やはりシャッタースピードが短くなれば失敗する確率も大きく下がる。

実に1万発の花火が打ち上げられ、2時間にも及ぶ撮影で150枚ほど撮影したのだが「まぁ見せられるか」という写真が10枚ほど。
満足いくものは1枚も撮れなかった。
花火の撮影は撮り方さえおさえれば簡単だというネットの意見も多く、少し楽観があったのだがやってみた感想としてははっきりと難しい。

まず打ち上げられる花火の高さが毎回違う。どの高さに標準を合わせるかは感というか適当にするしかない。
高く打ち上がる花火を狙って構図を決め、低い花火が打ち上がるとこのような寂しい写真になる。逆もまた然りである。
大雑把に言って高いのと低いの。1/2の確率で失敗する。構図を三脚で固定し、花火を追えない以上、これはプロでも一緒のはずだ。
そしてもう一つ。カメラ歴10年の友人も予想していなかった不運があった。
それが硝煙である


この日は台風10号の接近で雨と強風が懸念されていたが、大会が始まる時刻には雨も風もすっかり止み、反対に完全な無風とも言えるような状況だった
そのせいか前回に打ち上げられた花火の硝煙がその場に留まり、このような残念な写真が何枚も撮れた。
これは写真だけではなく、見ていてもこのような感じで非常に残念であった。
カメラ歴10年の友人もこれほどまでにひどいのは初めてとのこと。
この硝煙は完全な不運であったが花火撮影は運の要素が大きい。
先程述べた打ち上がる高さの予測もそうだが、明るさや数と言ったものがこちらの予想したものではないと明るすぎたり暗すぎたりしてしまう。
失敗を覚悟である程度数を撮影する心構えが大事そうだ。
もう少し綺麗な写真が撮れるかと思っていたがそれは来年までお預けになりそうだ。
最後に、満足。とまでは言わないが技術的に良い写真が何枚か撮れたので紹介する。



これらはそれぞれシャッターを1分近く開けて撮影した。
本来それだけ長い時間シャッターを開けていると光を取り込みすぎて真っ白な写真になってしまうがこれらは打ち上げの合間合間にレフ板でファインダーを遮断しながら低中高と打ち上げられた花火をすべて1枚に収めた。
あまり綺麗な写真ではないが初めてやってみた手法である程度意図した写真が撮れたことには手応えを感じている。
だがやはり花火のバルブ撮影は難しい。当分はスマホの花火モードのほうが綺麗に撮れそうだ。