4月7日に新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐため、政府は7都府県に対し緊急事態宣言を発令した。
そして4月16日には7都府県から全国に拡大し、全国民に対し不要不急の外出を避ける、通勤を止めテレワークに切り替える、営業の自粛などを呼びかけた。
安倍首相は宣言で「人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減することが出来れば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることが出来る」と説明した。
その後、緊急事態宣言の効果があったのか宣言から1週間で新規の患者数は減少に転じ始め、感染者の多い東京でも新規の感染者が二桁に減るなど、一定の効果を見せている。
政府のコロナ対策についてはとやかく言う人も多いが、世界の状況を考えると自粛要請だけでここまでの成果を上げているのは見事というほかない。
恐らく一定の人権が確保された民主主義国家でここまで出来るのは日本人だけであろう。
さて、そんな緊急事態宣言だが、その目的を多くの日本人が誤解しているように思うので今回は緊急事態宣言の目的について解説してみたいと思う。
ただ飽くまでこれは私の私見であり、必ずしも政府の考え意図を反映しているものではないことをご容赦いただきたい。
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緊急事態宣言の目的
多くの人が誤解していると思う緊急事態宣言の目的。それは感染拡大を防ぐためのもではなく、医療の確保を目的としている。ということだ。
もし新型コロナウィルス(以後COVID19)が狂犬病並みの強力なウィルスであったならば政府は急いで国民の行動制限が出来る法律を作り、法の下国民の行動を制限するだろう。また、そうすべきである。
もちろん人権への配慮などもあり、強制的に行動を制限する法律の施行は難しさもあるが、少なくともヨーロッパ並みの外出制限は実現できたはずである。
ではなぜ政府は新たな法律を作り、国民の行動を制限しないかというと感染拡大はある程度仕方がないと思っているに他ならない。
医療の崩壊を防ぐことが最優先
政府が最も気にしているのは医療の崩壊である。
つまりは
- 病人やけが人が出ても医者がおらず、治療できない。
- 病床が一杯で患者を入院、隔離できない。
- 人工心肺が必要だが人がいない、物がない。
などである。
COVID19はしっかりとした医療体制で療養し、症状の悪化に伴い人工呼吸器、人工心肺が使用できればそこまで致死率が高くないことが知られている。
だが、自発呼吸が出来なくなった人にマンパワーや物資の不足により、人工呼吸器が取り付けられないといった医療崩壊が起こると致死率は何倍にも膨れ上がる。
各国でCOVID19の致死率が大きく違うのはこの医療崩壊を起こしているかいないかが大きく関係している。
医療提供の度合いによって大きく変わる致死率
もし日本で20万人の感染者を出すとして、それが1週間で起こるのか、1年間で起こるのかでは天と地ほどの差がある。
こちらは国別の致死率をまとめたものだ。
世界で最大の感染者数を出しているアメリカの致死率は5.6%だが対するフランスは感染者数13万人とアメリカの約1/10にも関わらず致死率は3倍以上ある。
これはフランスの医療が崩壊し、入院が必要であっても入院できない、人工呼吸器や人工心肺が必要であっても装着できないなどの事態が発生していることが大きな原因だ。
まだ医療崩壊は起こしていないとされるアメリカだが、それでも日本と比べると倍の致死率がある。
もちろん致死率が低いとは言え死に至る可能性があるのだから感染拡大を防げればそれに越したことはない。
だが日本という小国が出来ることは限られており、その限られた力を医療崩壊の防止に振っている。そんな状況だ。
医療崩壊さえなければそこまで怖くないCOVID19
死者数の多さに惑わされがちだがCOVID19の致死率は発表よりかなり低いのではないかとする説がある。
その理由は以下の2つである。
感染者は発表されている人数の10倍いる
検査数の限界
なぜそんなことが起きるのかというと検査できる数に問題がある。
例えば疑わしい人間が100人いたとしても一度に検査できる人数は限られている。
こうした事態が積もり積もると発表人数と実際の患者数に乖離が生れていくことになる。
無症状患者の存在
もう一つは無症状患者の存在である。
日本ではCOVID19の感染確認は自己申告制である。
つまり何かしらの症状が出て始めて保健所に連絡し、疑わしいとなって初めて検査を受けることが出来る。
COVID19は感染者すべてに症状があるわけではなく、8割の人間は軽症で済む。
さらにはまったく症状が出ない人も相当数いると見られ、軽症で済んでいる人、症状が出ていない人で検査を受けていない感染者が相当数いると考えられている。
もし仮に感染者が実際の10倍いれば致死率は1/10ということになり、多くの国で致死率は1%を切る。
日本では今致死率は2.6%なので0.26%とということになり、通常時に起こる誤嚥性肺炎の方がよっぽど脅威になる。
ただ、COVID19は新型のウィルスであり、誰も免疫を持っていない。
そのため感染者数が膨大になり、死亡者が増えるのでとても恐ろしいウィルスに見えるというわけである。
日本の緊急事態宣言は十分機能している
以上のことを踏まえ、今回の緊急事態宣言について改めて考えてみる。
- COVID19は医療崩壊さえ起こさなければ人類存亡の危機になりうるようなウィルスではない
- 医療崩壊が起きると場合によっては5人に1人が死亡するような驚異的なウィルスに変貌する
- 緊急事態宣言は感染者を出さない対策としてはほとんど機能しないが感染者の発生を緩やかにするのに効果的だった
このように考えると緊急事態宣言は爆発的な感染者の発生を抑えたということで一定の評価が出来ると分かる。
問題は何を目的としているかである。
国民の、世界の疑問として
「こんな生ぬるいやり方で感染拡大を抑えられるものか」
というのがある。
だが、その通り。政府も抑えられると思っていないだろう。
大事なのは医療現場を維持し続けることなのだから。