Kindle unlimitedに登録してからいろんな雑誌を流し読んでいるわけだが健康や料理をテーマにした雑誌を読んでいるとちょくちょく健康食品の特集がやっている。
そこで何冊か連続で血糖値を下げる効果のある健康食品が紹介されていたので商品名を伏せて利用者の声の一部を紹介しよう。
ケース1
50代後半の女性は会社の健康診断で血糖値が300mg/dlあり緊急入院。
薬を飲み続けたがなかなか血糖値が改善せず。
家をリフォームした際、大工さんの残したおやつを毎日食べていたら高血糖で再入院。
食事改善に本格的に取り組むも10.0だったヘモグロビンA1cが9.7になっただけ。
血糖値は以前250オーバー。
そんな時対象商品を食前に1日3回飲むようにしたら2ヶ月でヘモグロビンA1cが6.2%まで下がった!さらに飲み続けたら最終的に5.9%まで下がった!
ケース2
病院に言ったら血糖値が高いと言われた。その時の血糖値は200、ヘモグロビンA1cは8.0%。
薬はしっかり飲み、油ものやご飯の量を減らすなどの食事療法を行うも2年後には合併症である網膜症を発症。
そこで対象商品を水分補給の代わりに、1日1Lを飲むようにしたら2週間で血糖値が112、ヘモグロビンA1cは5.9%に改善!
ケース3
60代後半男性、一日に甘いジュースを1Lくらい毎日飲んでいたら高血糖で倒れる。
病院で血糖値を測ってみると800もあった。
食事は注意していたものの暑いときに炭酸ジュースを飲んだらまた入院。
そこで対象商品を毎日ペットボトル3本分を飲み始めたら180あった血糖値が100前後に、7.9あったヘモグロビンA1cは6.0まで改善した。
もしこれらのことがすべて本当であるならばこれらの健康食品はとんでもない劇薬である。
それについて今から説明しよう。
地球上広しと言えど、糖が有り余って困るのは人間ぐらいである。
他の動物達は水分や糖質、塩分などの確保に一生を費やすと言ってもいい。
そしていざというときのために脂肪としてエネルギーを蓄え、必要なときにこれを燃焼し、糖に変える。
糖はありとあらゆる場面で必要になるので動物は血糖値を上げるためのホルモンがいくつも備わっている。
代表的なのがアドレナリンだ。別名(闘争・逃走)ホルモンと呼ばれるが、敵から逃げるときや狩りをする時などに分泌される。
このホルモンが大量に分泌されると一気に血糖値が上がる。これは逃げるにしても戦うにしても大量の糖が必要になることを意味している。
さて、それではここでいかにこれら健康食品が危険であるかに戻りたいと思う。
説明したとおり、基本的に動物は血糖値が下がって困ることがあっても上がって困ることはないのだ。
血糖値を下げなければならないというのは人間、それも先進国の豊かな生活をしている者たちだけであり、ほとんどの動物たちは糖が不足し、血糖の維持に困っている。
そんな中、摂取するだけで血糖値を急激に下げるなど、もはやそれは毒物でしかない。
そして血糖を上げるためのホルモンはたくさんあるが反対に血糖を下げるホルモンはインスリンしかない。
したがって、ヘモグロビンA1cや血糖値が下がったということはインスリンの分泌を促したか、インスリンの効果を高めたかの二択であるわけだ。
これら健康食品がどちらの方法で血糖値、ヘモグロビンA1cを下げているかは定かではないが、仮にインスリンの分泌を促したのだとすれば将来的なリスクは上昇することになる。
体内でインスリンを作り出せるのは膵臓だけである。インスリンの出が悪くなっているということはそれだけ膵臓が疲弊しているわけだ。それにムチを打ってインスリンの分泌を促すわけだから当然、膵臓への負担は増加する。
こんなブラック健康食品を使っていてはいずれ膵臓は一切のインスリンを出さなくなってしまうだろう。
さらにこれら、対糖尿病健康食品は根本的な問題を無視している。
我々の体を構成する細胞は本来、糖を摂取することが出来ない。それがインスリンが働きかけることにより、初めて細胞が糖を摂取できるようになる。糖尿病とは何らかの原因により、インスリンが作用しなくなったり、インスリンそのものが枯渇することで血中の糖が上昇してしまう。
行き場を失った糖はそのまま尿として排出される。本来エネルギーの塊である糖を排出してしまうなどということはありえないので尿に糖が混ざるというのは深刻な事態なのである。
さて、そんな糖尿病だが一番の原因は糖の過剰摂取だ。
空腹の時、我々はかきこむようにご飯を食べるが細胞も同じで糖が流れてくると喜んで糖を体に取り込む。
しかし我々が無限に食事を食べられないように、細胞も糖を取り込む限界がある。
十分に糖を取り込んでいるにもかかわらず、次から次へと糖が血中に流れ込んでくる。
もう取り込めませんと細胞たちは糖の摂取を拒否するが糖は供給され続けるので膵臓は糖を取り込むようにとインスリンの分泌を増やすわけだ。
つまり高血糖の状態というのは満腹状態にある細胞に大量のインスリンを使って無理やり糖を摂取させている状態だ。
この状態を長く続けていると、細胞たちは糖の摂取を拒否し続け、血糖が下がらないことに膵臓はさらにインスリンを分泌する。という悪循環が起こる。結果、高血糖によって深刻な合併症を引き起こし体がダウンするかインスリンを作る細胞が過労死し、インスリンがまったく分泌されない体になってしまうわけである。
「血糖値を下げる」ということはつまり糖を体に吸収させるということなのだ。
ここで考えてほしい。
運動も食事制限もせず、糖を体に吸収させ続けたらいったいどうなるのかを。
この健康食品のメカニズムは不明だがとにかく血糖値を下げる効果があるらしい。
体はせっせせっせと糖を吸収していることになる。
つまり、もう満腹で食べられない!と悲鳴を上げている人に、何らかの方法で食事を続けさせているということだ。
こう考えると非常に恐ろしいし、えげつない。
また、体は糖を摂取し続けているわけだから体重は増え続けるのである。
こんな危険な代物を果たして健康食品と呼んでいいのだろうか。
また健康な人が摂取した時の悲劇も想像に難しくない。
相手は2週間足らずでヘモグロビンA1cを2%~3%も下げてしまう劇薬だ。血糖値に問題のない健康な人が摂取した場合、あっという間に低血糖で倒れてしまうことだろう。
さて、ここまで健康食品はとんでもない劇薬だと語ってきたが今の時代はそんな劇薬は数多く存在する。
だがそれらは医師の管理下で初めて使用することが出来る。それは上述したように使い方を間違えれば即、死にかねないからだ。
このように身体に劇的な効果をもたらす成分や化合物は薬事法で厳密に管理されている。
もしこれらのことが事実であるならばそれはつまり薬事法違反であることを意味している。
そうなればこれら健康食品は薬事法に違反した本物であるか、レビューが嘘かという話になるわけで可能性で考えればレビューが嘘か、誇張していると考えるのが妥当だろう。
糖尿病に限らず、ダイエットでも似たような健康食品をよく目にする。
何ヶ月飲むだけで何kg痩せた~~的なやつである。
そんなものが存在するならとっくに生活習慣病の治療薬として薬化されているはずだし、医師の指導や管理なしに販売できるはずもない。
飲むだけで痩せたり体脂肪が減ったり血糖値が下がるなどという劇薬は日本の法律上、絶対に出回らないということを理解してほしい。
まとめ
利用者として紹介された人たちはすべてさくらで事実無根を書いている、となればそれこそそれは詐欺になる。
おそらく彼らがこれらの商品を飲んで血糖値を下げたというのは事実なのだろう。
だが彼らの境遇をよく見てほしい。彼らはこのままでは死ぬ、重度の合併症になるという切羽詰まった状態まで追い込まれていた。
薬もしっかり服用しただろうし、食事も運動も今まで以上に気をつけたはずだ。
血糖値やヘモグロビンA1cの正常化はこうした生活習慣の改善、彼らの努力の賜物なのである。