うちでは毎年この時期に一年間で使う味噌すべてを自家製している。
本業は下宿なので毎日十数人分の朝食と夕食を作っているので年間でかなりの量の味噌を消費するのだ。
今回はそんな味噌作りの工程を紹介したいと思う。

味噌を作るのは市民センターだ。
事前の予約が必要だが味噌を作る3日間、設備を格安で貸し出してくれる。
やはり1年分の味噌となると家庭の設備では不可能だ。

まずは麹の元となる蒸し米?を作る。
こちらは一晩水につけた米。
何でも味噌作りようの米なるものがあるらしく、これはその米である。
一斗五升(25kgくらい)で約3000円。
衝撃的な安さである。

見た目も普通の米と変わらず、蒸した後も味見したが変な味はしなかった。
食用で手に入らないだろうか……

一晩じっくり水に漬け、十分に水分を吸った米をこの特大の蒸籠で一気に蒸し上げる。

底の隙間からコメが漏れぬよう、通気性の良い布を敷き、その上に一晩水に漬けた米を敷き詰める。
これを専用の釜で一気に蒸し上げるわけだが、この時点で50kgほどあるのでかなりの重労働だ。

専用の釜はこちら。
頑張れば人ひとり茹で上げられる大きさである。
この釜に水を一杯に張り、その蒸気で米を蒸すのである。

釜に蒸籠をセット。
あとは信じられない火力で米を蒸していく。
およそ25kgの米を家で蒸そうと考えたらどれくらい時間がかかるか分からないがこれを使えば1時間半で蒸すことが出来る。

米を蒸している間は麹と並んで味噌の核となる大豆の下ごしらえを済ませておく。
こちらも味噌作り用の大豆で国産でありながら1kgあたり100円という衝撃的な安さ。
粒が若干不ぞろいであるが、こちらも著しく品質を欠くようには見えない。

この大豆を米を研ぐのと同じ要領で手でかき混ぜながら洗う。
水を取り替えてまたかき混ぜては洗いを3回ほど繰り返し、汚れを落とす。

十分に大豆を洗ったらこれまた米と同じように丸一日水に漬けて十分に水分を吸わせる。
一日付けると粒の大きさ倍ほどになる。

大豆をしこしこと洗ってるうちに米が蒸し上がったようだ。

蒸し上がったばかりの米は炊いた米とほぼ変わらない状態だ。

色も艶も良く、美味しそうな炊き立てご飯のようだ。
だが実際は水分量が足りないせいか食べてみるとゴムのような弾力があり、美味しくない。
やはり食べるならしっかりと水を吸わせて炊き上げないとだめなようだ。

蒸し上がった米を十分に蒸らしたら、米をかき混ぜて温度を下げる。
十分に蒸らしても米の中心部は100度に近い温度になっている。
この蒸した米に麹菌を振りかけて増やすわけだが、麹菌は高温に弱く、この状態で麹菌を付けると死んでしまうのだ。
最も増えやすいのは人肌の35度あたりなので温度になるまでかき混ぜて冷やしていく。

布を広げて米を出すとこんな状態。
とにかく熱く麹菌を付けられる状態にないので買い混ぜてかき混ぜてとにかく冷やす。

米が十分(人肌程度)に冷えたら米に麹菌を付ける。
片栗粉でも小麦粉でもこうして袋に入れるといかがわしい物に見えてしまうのは何でだろう。

麹菌は茶こしを使ってなるべくまんべんなく振りかける。
酒造りでもこの麹菌の振りかけが酒の味を決めるのだとか…
因みにかなり適当に振りかけているが麹造りで失敗した経験はない。そこまで神経質にならなくてよいようだ。

麹を振りかけたら米にまんべんなく麹が付くよう、執拗に混ぜ合わせる。
多少テキトーな振りかけ方をしてしまってもここでしっかり麹を米になじませれば挽回できる。
ちなみにこの時点で米がかなり黄ばんでいるが毎年このようになる。
米を炊いているか蒸しているかの違いなのか、それとも質の低い麹造り用の米だからこうなるのかは分からない。
ただ出来る麹には一切問題はない。

麹を付けた米はこのように布の敷いた板に敷き詰め、培養する。

麹を育てるのはこの育苗器なる専用の機械だ。

下のこの水槽?に水を溜め、

上に麹を付けた米をセットする。

あとは密閉し、温度を麹が増えやすい35度に設定すれば高湿度の菌が繁殖するのに絶好の環境が整うわけである。
なぜ都合よく麹菌のみが繁殖し、他の雑菌が繁殖しないのか疑問に思ったが菌はそれぞれにおいて増えやすい温度帯が違うようだ。
35度という温度は麹菌にとって最も都合がよく、他の雑菌が繁殖しようとしても麹菌が勝つのでカビまみれになるなどと言う事はないのだとか。

あとは麹が増えるまで、大豆が水を吸うまですることがないので初日の工程はこれで終了である。
明日は麹をさらに増やすため一工夫する。